ポエトリーリーディングとは、音楽に乗せて詩人が自作の詩を朗読することを指す。HIPHOPでもそれは可能で、ポエトリーリーディングラップというジャンルも存在する。(明確に区分されているわけではないと思うけど)
私は、どちらかというとHIPHOPとは無縁の人間だった。B-BOYたちは怖かったし、スケートもやらないし、オシャレも全然気を遣ってこなかった。
HIPHOPがアンダーグラウンドに根を張っているなら、私は、オーバーグラウンドで居場所を見つけられず、かといってアンダーグラウンドにもいけない中途半端な人間だ。
そんな私だが、ゴリゴリのHIPHOPはまだ苦手である。洋楽HIPHOPもあまり聴かないし、黒すぎるミュージックは未だに受け入れがたい。現場に行きたい気持ちはあるけど、怖くていけない。
優しい日本語を使ったHIPHOPが好きなのだ。だから、ポエトリーリーディングラップとの相性は抜群だった。
弱者に力を与えるのがHIPHOPならば、ポエトリーリーディングラップは間違いなくHIPHOPである。現に、私が大きな力をもらっている。それが、私がポエトリーリーディングラップを聴く理由だ。
正直に言うと、あまりディグれていないのだけども、食らった音源がいくつかあったので書いていきたいと思う。
狐火【マイハツルア】
狐火の「昨日までのベスト」は本当に名盤。マイハツルアは、認知症を患うおばあちゃんを題材にした楽曲。おばあちゃん子である私には痛いほど染みてしまった。綺麗ごとだけでなく、こういったリアルを曲にできるのがHIPHOPの醍醐味だと思う。
ZORN【奮エテ眠レ】
ZORNはポエトリーリーディングラッパーではないと思うんだけど、奮エテ眠レだけはポエトリーリーディングラップのように歌い上げている。
一小節、一小節が刺さるように響くことと、具体性のあるリアルなライムが特徴。
「かけるものがないんです、人生でいいですか」は有名すぎるパンチライン。若者の焦燥感を、粗削りながら先鋭に表現している。
不可思議wonderboy【Pellicule】
Pelliculeは、ポエトリーリーディングラップの代名詞のような曲だ。
不可思議wonderboyは24歳のときに交通事故で亡くなってしまっており、悔しくも音源が評価されだしたのは彼の死後。叙情的な歌い方に柔らかいリリック、透き通るような鮮明さをもつ一曲である。
今こうして記事を書いているだけでも、泣きそうになるほど心を揺さぶられた。
神門【信信】
とてもやさしい曲。韻やメロディではなく、真っ直ぐな言葉で魅了してくれる。神門は愛に溢れるラッパーだ。信信では、愛する大切な人について言葉が重ねられている。
誰かを愛することで付きまとう不安や、信じることの辛さが表現されている。しかし、それでも信じることの大切さを伝えたい、そんなメッセージを感じる一曲だった。
MOROHA【tommorow】
心にグサッと刺さる楽曲。MOROHAは、どの楽曲も聴き手に何らかのダメージを与えてくる。tomorrowもそうだ。
ストーリーテリングされた歌詞に、MOROHA独特のエモーショナルな歌い方。「お前さあ、本当のことを言ってみ?お前も腹じゃ笑ってるんだろう?馬鹿にしてんだろう?言えよ?言えよ!」
このラインを見ただけで、tomorrowのやばさが伝わると思う。幸せなときには聴けない楽曲だ。
まとめ
各ラッパーの詳細についてはあまり書かなかったので、やばいと思った人は自らディグってほしい。楽曲も、それぞれがもっとやばいものを出している。ポエトリーリーディングラップは、韻やメロディに縛られない分、リリックに自由がある。
そのリリックにはラッパーそれぞれの個性や想いが表現されているので、ぜひ歌詞に食らいながら聴いてほしい。そんなことを言っている私も、まだまだ知らない楽曲が多いのでガンガン掘っていきたいと思う。
▼狐火のアルバム