東野圭吾の小説「パラレルワールドラブストーリー」を読み終えた
本屋に寄ったとき、平積みにされていたので気になって読んでみた。
東野圭吾は、名前は知っていたもののミーハーなイメージがあったせいで読んだことがなかった。
なぜ今になって読んでみたのかというと、女性と会話をする上で、トレンドを抑えおくことも重要だと思ったからだ。
東野圭吾を読んでいる人は多い。
小説を読むと話す女性の多くは、東野圭吾か伊坂幸太郎を読んでいる。
私は、どちらも読んだことがない。
伊坂幸太郎は一度手をつけたことがあるのだけど、相性が悪くすぐに読むのをやめてしまった。
「パラレルワールドラブストーリー」は、今度映画化されるらしい。
トレンドを抑えるという目的において、これほどぴったりな本はなかった。
「パラレルワールドラブストーリー」の感想
私は、本書を恋愛小説だと思って手にした。
恋愛は関心の深いジャンルだし、恋愛小説の多くは読み味が軽いので、娯楽として読むには丁度いい。
小難しい本も好きだが、頭を空っぽにして素直になれるこういった本も好きだった。
本書は、大別すると恋愛小説ではなかった。
東野圭吾がミステリー作家として名を馳せていることは知っていたが、名前が名前なので、恋愛小説だと思ってしまった。
内容は、脳科学関係の研究員として働く主人公の男性とその親友が、ある1人の女性を巡って争うというもの。
これだけを聞くと「なんだ恋愛小説じゃないか」と思うだろうが、ストーリーには「記憶」というものが大きく関わっていて、この「記憶」が物語を大きく混乱させていくのだ。
読者である私たちもその混乱に巻き込まれ、読み進めていくうちに、単なる恋愛ものではない、これはミステリー小説だということに気がつく。
なので、ジャンルとしては「恋愛ミステリー」という感じだろう。
読んだ感想としてまず思い浮かんだのは、恋愛とは狂気であり、狂気であることが正常なんだなということ。
※ネタバレ
主人公は、親友の恋人に恋をしてしまう。
親友として彼を祝福してあげなくてはいけないという思いと、どうしようもなく彼女を好きという気持ち。
どちらも、主人公の中に内在する確かな感情であり、この葛藤は苦しめ続けた。
そして、葛藤の末に、主人公は親友を裏切ることを決め、彼女を追い求めてしまう。
長年の夢さえも捨てて彼女を愛した。
主人公の行動は、世間一般の常識においては異常であるが、恋愛においては正常なのだと思う。
恋愛とは狂気であるからだ。
主人公ほど激しく求めた経験はないが、同じベクトルの行動を起こしたことはある。
連絡が返ってこないことに悩み一睡もできないとか、振られた後もしつこく連絡をしてしまったりとか、自分でもどうしようもない衝動に駆られて、おかしな行動を取ってしまった。
まさしく、あの頃の自分は恋愛をしていたのだろう。
また、パラレルワールドラブストーリーは、恋愛だけでなく友情も強く感じさせる作品だ。
降りかかる情動に耐えきれなくなった主人公に対し、親友がどんな判断を下したか。
そこに、男同士の友情が表現されている。
私は、この部分を読んだとき、「パラレルワールドラブストーリーは、恋愛ミステリーじゃない。友情の物語だ」とさえ思った。
本書は文庫だとかなり分厚いので、読み応えがある。
恋愛、ミステリー、友情。
色々な要素の詰まった面白い作品なので、ぜひ読んでみて欲しい。